足場安全点検の制度化について

足場安全点検の制度化について

足場を使用する全ての現場が対象です。

 

墜落死亡災害は毎年200人台

  • 建設現場において、高所からの墜落死亡災害がほぼ毎年200人台に上ることをご存知でしょうか。この数字が如何に異常であるかは、毎年日本列島を襲う自然災害による死者・行方不明者と比較してみれば一目瞭然です。
  • 防災白書を見ると、近年では、平成7年の阪神淡路大震災の6,482人と平成16年の新潟県中越地震等の327人を除き、200人を超える年はありません。一方は単なる建設現場、他方は日本全体。こんなに大きな違いがありながら、どうして建設現場の死者の方が多いのでしょうか。200人台の死者は仕方ないものとして諦めるしかないのでしょうか。

 

墜落災害防止対策の制度化が不可欠

  • そんなことはありません。国がキチンと墜落災害防止対策を制度化すれば十分に防ぐことができるのです。
  • 具体的には、ハード面とソフト面の対策があります。
    ハード面としては、
    【1】2m以上の高所作業においては必ず足場を設けることと、
    【2】足場の全段に二段手すりと幅木(つま先板)を設けることが決め手です。
    ソフト面としては、
    【1】足場の安全点検を足場の組立て時、変更時等に行うことと、
    【2】その場合、専門的知識を有する有資格の第三者が足場の種類と機材に応じた専用のチェックリストを使用して安全点検を行うことが決め手です。

 

平成21年(2009年)6月1日から新たな墜落災害防止対策の制度がスタート

  • 厚生労働省は、平成19年に設置された「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会」の報告書を踏まえ、この度、労働安全衛生規則を改正するとともに厚生労働省労働基準局安全衛生部長通達を発出し、6月1日から以下のようなハード・ソフト両面の対策を講じることとしました。
改正後の労働安全衛生規則や安全衛生部長の通達についてはこちら
(厚生労働省ホームページ)

 


ハード面

過去5年間の死亡災害を分析した結果、足場の下部からの墜落死亡災害の防止が急務であるとして、以下のとおり労働安全衛生規則を改正しました。
  【1】人の墜落防止のために、
(イ) 枠組足場にあっては、交差筋交とさん(高さ15cm~40cm)又は幅木(高さ15cm以上)の設置か、手すり枠の設置を義務づける(同等の以上の設備を含む。)。
(ロ) 枠組足場以外の足場にあっては、手すり(高さ85cm以上)とさん(高さ35cm~50cm)の設置を義務づける(同等以上の設備を含む。)。
【2】物の落下防止のために、
幅木(10cm以上)、メッシュシート又は防網の設置を義務づける(同等以上の設備を含む。)。
人の墜落防止のためには、上記の労働安全衛生規則以上の措置があるべきだとの立場から、安全衛生部長通達により、以下の「より安全な措置」が講じられるべきこととされました。
 
【1】 枠組足場にあっては、上記【1】(イ)の措置に加え上さんを設置するか、二段手すりと幅木の機能を有する「手すり先行専用型足場」を設置すること。
【2】 枠組足場以外の足場にあっては、二段手すりと幅木を設置すること。
今回、人の墜落防止を目的とする「手すり先行工法等に関するガイドライン」が安全衛生部長通達の中に位置づけられ、足場の組立て・解体は「手すり先行工法」により行い、使用時には「働きやすい安心感のある足場」を設置することとされました。また、このガイドラインは足場を必要とする全ての建設工事に適用することとされました。

ソフト面

足場の安全点検は、これまでも労働安全衛生規則第567条により事業者に義務づけられていましたが、その方法については全く規定がありませんでした。今回、労働安全衛生規則の改正により、点検結果を記録し、保存することが義務づけられました。また、安全衛生部長通達により、点検実施者は「足場の点検について、十分な知識・経験を有する者」であって事業者が指名したものでなければならないとされ、点検に当たっては、足場の種類・機材に応じた専用のチェックリストを使用して行い、チェックリストには点検者の職氏名を記入することとされました。
全国仮設安全事業協同組合の仮設安全監理者は「足場の点検について、十分な知識・経験を有する者」として適格者である旨を厚生労働省が表明しました。

架設通路及び作業構台の墜落防止対策

  • 上記の人の墜落防止に係る労働安全衛生規則の改正内容のうち、ハード面については架設通路及び作業構台に、ソフト面については作業構台に適用されます。

 

規則等を遵守しない場合の処置

  • 以上のハード・ソフト両面の対策によって、高所からの墜落死亡災害は確実に減少するものと思われます。しかし、折角、労働安全衛生規則が改正され、安全衛生部長通達が発出されても、遵守されなければ意味がありません。遵守しない場合、一般的には、以下のような処置が取られます。
労働安全衛生規則を遵守しない場合
労働基準監督官から、文書によって「是正勧告」と「使用停止命令」が行われます。それでも是正しない場合は、「司法処分」が行われます。
安全衛生部長通達を遵守しない場合
労働基準監督官から、「文書による指導」等が行われ、「改善結果の報告」が求められます。

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